イエレンFRB議長記者会見(2017年12月14日)

2017年12月14日

本日早朝(12/14)に発表されたFOMC声明後のイエレンFRB議長記者会見の全文です。(時事通信より転載)

【前置き】
 こんにちは。FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利の目標レンジを0.25%引き上げ、1.25~1.50%にすることを決定した。金融緩和を徐々に絞ることで、インフレの2%回帰を助長し、強い労働市場を支えるとの判断を反映したもので、最大限の雇用と価格安定という、法律でわれわれに課された使命に則したものだ。
【経済動向】決定についてさらに語る前に、経済見通しにおける最近の経済動向を説明したい。経済成長は今年第1四半期に鈍化した後、第2、第3四半期には3.25%の堅調なペースに加速した。
 家計支出は緩やかに拡大している。企業の設備投資は拡大し、良好な海外の経済成長により輸出が支えられた。
 全般的に、われわれは、経済は緩やかなペースで拡大すると引き続き予想する。税制改革により、今後数年間、経済活動は幾分押し上げられる見通しであるものの、税制改革によるマクロ経済的な影響の度合いや時期は依然不透明だ。
 ハリケーン関連の影響をならすと、11月までの3カ月の雇用者増加数は月平均17万人と、労働市場への新規参入者を吸収するに必要と想定されペースを大きく上回った。失業率はここ数カ月、一段と低下し、11月は4.1%。FOMC参加者が長期的水準と想定する値を小幅下回った。
 労働利用に関する他の指標も強さを継続している。過去4年間、労働参加はネットでは、ほとんど変化がない。米国人口の高齢化を主因に、労働参加が潜在的に下向き傾向であることを考慮すると、労働参加率が比較的安定しているのは、労働市場の一段の改善を示すさらなる証拠だ。
 われわれが労働市場の見通しに関する文言を変更したことに気付いたかもしれないが、この変更は、持続的な雇用創出や十分な労働機会、さらに賃金の上昇を伴い、労働市場が強さを継続するとのFOMCの見通しを強調するものだ。今後数カ月、労働市場環境がさらに幾分強まると見込んでいる。しかし、われわれは金融緩和の規模を徐々に縮小し、雇用増加のペースは緩むと予想する。
 労働市場の過熱を容認すると、遅れた段階で金融政策を突然引き締めるリスクを高めることになり、経済成長を脅かす。経済成長が加速し、労働市場が強まっていても、インフレはFOMCの長期的目標である2%を下回り続けている。
 10月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比で1.6%と、夏より若干上がったが、今年それ以前に見られた水準を下回った。変動の大きい食料とエネルギーを除いたコアインフレも同様の動きで、10月は1.4%だった。
 われわれは、今年インフレが意外にも弱かったのは広範な経済環境とはほとんど関連がない一時的な動きを反映していると引き続きみている。結果として、この先2年間にインフレは上昇し、2%付近で安定するとの想定をわれわれは維持している。
 とはいえ、以前述べたように、インフレの要因に関するわれわれの理解は完全ではない。声明で強調した通り、われわれはシンメトリック・インフレーション・ゴールと比較してインフレの現状と見通しを緊密に監視し、先に指摘したように、中期的なインフレおよび雇用目標を達成するために必要な金融政策調整を行う用意がある。
 FOMC参加者が今回の会合に提出した経済見通しに移らせてもらう。いつもの通り、それぞれの参加者が適切とみる金融政策を前提とした予想であり、見通しを形成する多くの要因についてのそれぞれの参加者の評価に依存するものだ。
 インフレ調整後の実質GDP(国内総生産)増加率の予想中央値は2017、18年は2.5%で、20年には2%に減速する。これは長期予想を若干上回る。17年第4四半期の失業率予想の中央値は4.1%で、その後3年間は4%付近と、長期予想を小幅下回る。
 最後に17年のインフレ予想の中間値は1.7%で、18年は1.9%、19および20年は2%だ。9月時点の予想と比べると、実質GDPは若干強く、失業率は低め、インフレは基本的に変わらず。
 参加者は概して、経済見通しが若干強まった理由として、税制改革を挙げた。ただ、参加者の多くは、将来導入されるであろう具体的な税政策によるマクロ経済への影響について、引き続き不透明さが強いと指摘した。
 金融政策に移ろう。過去2年間、FOMCは緩やかにフェデラルファンド(FF)金利の目標レンジを引き上げてきたが、経済はわれわれの目標である最大の雇用、価格安定に向けて進み続けている。
 本日の決定はこのプロセスを続けるものだ。われわれは引き続き、経済の強さにより、FF金利を徐々に引き上げることが正当化されると見込んでいる。これは、金利が依然、中立レベルを幾分下回っているとの認識に基づいている。中立というのは、拡大的でも、収縮的でもなく、経済を平衡に保つレベルだ。中立金利は現在、歴史的基準に比べると、かなり低くなっているようなので、中立政策スタンスに至る上で、FF金利は、さらに大きく上がる必要はない。
 しかし、われわれはFF金利の中立レベルが今後いくらか上昇すると予想しており、強い労働市場を維持し、インフレをより長期的な目標の2%付近に安定させるために、この先2、3年の間に緩やかな追加利上げが適切だろうとみている。
 それでも、FOMCは、より長期的なFF金利の中立レベルが、過去数十年の水準を下回り続ける公算が大きいと見込んでいる。この見方は、参加者が適切と見込む金融政策と一致するものだ。
 18年末時点のFF金利の予想中央値は2.1%、19年末2.7%、20年末3.1%。9月時点の予想と比べると、FF金利予想の中央値は19年まで変わらず、20年は若干高い。
 経済見通しはかなり不確実であり、参加者の経済見通しやこれが修正されるリスクについての見方が変われば、適正とみるFF金利の道筋についても変更される。
 金融政策は決められた道筋をたどらない。10月に着手したバランスシート正常化プログラムは進んでいる。先にわれわれが表明した通り、FF金利の目標レンジの変更が、金融政策スタンス調整の第1の手段だ。
 われわれは、バランスシート正常化プログラムを変更する必要を見込んでいない。それゆえ、声明ではもはや、このプログラムには言及しない。もちろん、深刻な状況悪化や経済見通しによりFF金利の大幅引き下げが正当化されるなら、再投資を再開する用意をする。
 最後に、言っておきたいのは、来年あと1回FOMCに参加するが、これが最後の定例の記者会見になる。
 この先1カ月半、後任のジェイ・パウエル(理事)への円滑な引き継ぎのため、最善を尽くす。パウエル氏は、私がそうであったのと同様、FRBの極めて重要な社会的使命に深くコミットしていると確信する。
 この4年間、良い聴衆でいてくれて、ありがとう。いつもと同じく、質問を喜んで受けます。