FOMC声明全文(2016年9月22日)

2016年9月22日

本日早朝(9/22)に発表されたFOMC声明の全文です。(時事通信より転載)

【前置き】
 こんにちは。本日先ほど終了した会合で、私とFOMCの同僚は、全般的な経済情勢について検討し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25~0.50%に据え置くことを決めた。
 われわれは、利上げの根拠が強まったと判断したが、今のところは政策目標に向けた進展の継続について、さらなる証拠を待つことにした。われわれの現行の政策は、経済が最大雇用と物価の安定という政策目標に向けて進むのを支援するはずだ。後で政策決定について詳しく話すが、最初に経済見通しの最近の動向について説明する。

【経済見通し】
 経済成長は、年前半に弱かったが、このところ持ち直した。家計支出は引き続き、成長の主要な要因だ。支出は、家計収入の堅調な増加に支えられている。比較的高い水準にある消費者景況感と資産も下支え要因だ。
 ただ、設備投資は引き続き、エネルギー分野だけでなく全般的に弱い。エネルギー産業は2014年半ば以降、原油価格下落で大きな打撃を受け、この分野の投資は今年前半も引き続き減少した。しかし、油田掘削活動は最近安定してきている。全体として経済は、今後数年にわたり緩やかなペースで拡大すると見込んでいる。
 雇用に関しては、過去4カ月間の雇用増は平均約18万人で、年初来の堅調なペースと同じだった。長期的に見ると、このペースは労働市場に新たに入ってくる人々に職を提供するのに必要だと考えられる水準を、十分上回っている。ただ、今年はこれまでのところ、労働市場の需給ギャップに関する指標はほとんど変わっていない。8月の失業率は4.9%で、1月と同じだった。さらに、就労意欲はあるものの最近求職活動を行っていなかったり、正規採用を希望しながらパート勤務に甘んじていたりする人を含めた広義の失業率も横ばいが続いている。
 雇用が堅調に増加しているにもかかわらず失業率が横ばいで推移しているのは、多くの人々が恐らくは求人の増加や賃金の上昇を受けて、積極的に求職に乗り出したことを意味している。これは、当該個人にとっても国全体にとっても非常に歓迎すべき動きだ。
 われわれは引き続き、労働市場の状況が今後さらに幾分改善すると見込んでいる。現在の経済成長と労働市場の改善は、われわれのインフレ見通しを支える重要な要素だ。消費者物価全体の上昇率は、個人消費支出(PCE)物価指数で見ると、7月時点の前年同月比が1%を下回り、なおわれわれの目標である2%に達していない。目標を下回っている主因は引き続き、過去のエネルギー価格と輸入物価の低下だ。動きの激しいエネルギーと食品を除いたコアインフレ率は、おおむね1.5%で推移している。
 インフレ率は、抑制要因となっている一時的な影響が薄れ、労働市場が一段と改善するにつれ、今後2~3年で2%に上昇すると引き続き予想している。われわれのインフレ見通しはまた、長期的なインフレ期待が引き続き十分に落ち着いているとの判断に基づいている。しかし、長期的なインフレ期待の安定は盤石なものとも言い切れない。引き続き、インフレ率の目標達成に向けた進展の実績と見通しを注意深く観察していく。われわれは、2%のインフレ目標を達成する義務がある。
 FOMCの参加者が今回の会合で示した2019年までの経済見通しについて、説明する。
 いつものように各自の予測は、それぞれが適切と考える金融政策の見方に基づいている。そして金融政策の見方は、経済見通しを形作るさまざまな要因の評価に基づいている。
 今年の実質GDP(国内総生産)の予想中央値は1.8%だった。この値は6月時点より幾分低い。年前半の成長が当初見込んでいたより弱かった結果だ。17年と18年の予想中央値は2.0%で不変だ。これは、長期的な平常水準の予想中央値を幾分上回る。19年には1.8%に少し下がる。長期的な水準の予想値とほぼ同じで、この水準は6月時点より少し切り下げられた。
 失業率の予想中央値は、今年末に4.8%で6月時点より若干高い。今後3年間、失業率の予想中央値は4.5%近辺で推移する。これは長期的な平常水準の中央値を小幅に下回る。最後になるが、インフレ率の予想中央値は、今年が1.3%で、来年1.9%に上昇し、18年と19年は2%となっている。

 金融政策に話を戻すと、最近の経済成長の持ち直しと労働市場の改善の継続で、FF金利引き上げの根拠は強まった。さらにFOMCは、経済見通しのリスクはおおむね均衡している、と判断している。それでは、なぜ今回の会合で利上げをしなかったのか。 金融政策に話を戻すと、最近の経済成長の持ち直しと労働市場の改善の継続で、FF金利引き上げの根拠は強まった。さらにFOMCは、経済見通しのリスクはおおむね均衡している、と判断している。それでは、なぜ今回の会合で利上げをしなかったのか。
 われわれの決断は、経済に対する自信の欠如によるものではない。労働市場の状況は改善しており、この傾向は続く見通しだ。インフレ率は低いが、今後2%の政策目標に上昇すると見込んでいる。しかし、労働市場の需給ギャップの解消ペースは過去数年と比べて幾分減速し、市場にはまだある程度の改善余地が残っている。また、インフレ率は引き続き2%の政策目標を下回っている。このため、われわれの政策目標に向けた進展が継続するという、さらなる証拠を待つことにした。 金融緩和の削減にあたってこのような慎重な姿勢を取ることは、短期金利が依然としてゼロ%近辺にあるため、なおさら適切だ。なぜなら(金利がゼロ近傍にあることで)将来予想外に強いインフレ圧力に見舞われた際、より効果的に対応できる。労働市場の悪化とインフレ率の低下に対し利下げを行うことに比べて(引き締め方向への)対応余地が大きい。
 われわれは引き続き、経済情勢の改善は、政策目標の達成・維持のためには緩やかな利上げしか正当化できない程度にとどまる、と予想する。それは、経済を縮小も過熱もさせずバランスの取れた状態に維持するのに必要な金利水準、つまり中立的な名目FF金利が現在、歴史的に見て極めて低い水準にあると考えるからだ。FF金利が中立水準を小幅に下回っていることから、現在の金融政策のスタンスは、小幅に緩和的だと考えるべきだ。これは、われわれの目標に向けたさらなる進展を促すのに、適切だ。
 しかし、金融政策の緩和の度合いが小幅にすぎないため、政策が近い将来後手に回るリスクは低く、FF金利のゆっくりとした引き上げで中立的政策スタンスに今後数年かけて戻していくことが、十分可能であると考えられる。
 この考え方は、参加者による適切な金融政策の見通しと一致している。FF金利の予想中央値は来年末時点で1.1%、2018年末で1.9%、19年末で2.6%と、徐々にしか上昇しない。6月時点の見通しと比べ、FF金利の中央値の道筋は、0.25~0.50%下方修正された。ほとんどの参加者はまた、FF金利の長期的な平常水準の予想値を引き下げた。中央値は今や2.9%だ。
 これまでに指摘したように、FOMC参加者のFF金利見通しは、中央値を含めて将来の金融政策の計画ではない。金融政策はあらかじめ定まったコースを進むものではない。これらの予測は、参加者の適切な金融政策はどうあるべきかという個人的な考え方に基づいており、この考え方は各自の経済成長、雇用、インフレなどに関する予想が背景となっている。しかし、経済見通しは本質的に不確実なものだ。適切なFF金利の道筋に関する考え方も、経済見通しと関連リスクの変化に応じて変わる。

 最後に、FOMCは引き続き、満期を迎えた国債やエージェンシー債、住宅ローン担保証券(MBS)の償還資金の再投資を続ける方針だ。声明で強調したように、この方針はFF金利の水準の正常化が相当進展するまで続く、と見込んでいる。大量の長期証券の保有は、緩和的な金融環境の維持に役立ち、将来大きく有害なショックが起きた場合にFF金利をゼロに引き下げなければならなくなるリスクを低減するはずだ。静聴に感謝する。それでは質問を受け付ける。