イエレン議長の下院議会証言要旨(2014年2月12日)

2014年2月12日

昨日(2/11)22:30にイエレンFRB議長の下院金融委員会で、米経済と金融政策に関する議会証言が行われました。
今後の金融政策の方向性が示されるのではないかということもあり、たいへん注目されていました。
以下は要旨で、ロイターからの転載です。

証言原稿

<労働市場の健全性評価>
労働市場の回復は完全な呼べる状況には程遠い。失業率は依然、持続可能な完全雇用と一致する連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の見通しを大きく上回っている。半年以上の長期失業者が引き続き、異例なほどに失業者の大部分を占めているほか、正社員になることを望みながらもパートタイム職にとどまっている人々の比率も極めて高い。こうした状況は、米労働市場の状況を評価する際、失業率以外の要素も考慮することの重要性を浮き彫りにしている。

<最近の軟調なインフレ>
最近の軟調なインフレは、原油価格や非原油製品の輸入価格の下落といった一時的な要因を一部反映している公算が大きいようにみえる。

<金融市場のボラティリティ>
国際金融市場で見られる最近の変動を注視している。現時点で、こうした動向が米経済見通しに著しいリスクを及ぼすとは認識していない。しかしながら、引き続き状況を監視していく。

<金融政策の戦略>
FOMCの金融政策姿勢に強い継続性を想定している。現在の政策戦略を定めた時、私自身はFOMCのメンバーだった。その戦略を強く支持する。

<月当たりの債券買い入れ規模の縮小ペース>
労働市場の状況が改善し、インフレがより長期の目標に再び近づいていくというFOMCの予想が今後の指標でおおむね裏付けられれば、FOMCは今後の会合で、一段と慎重なステップを踏んで資産買い入れペースを落とす公算が大きい。とはいえ、買い入れについてはあらかじめ定めておらず、買い入れペースに関するFOMCの決定は引き続き、予想される効果や費用の評価、労働市場やインフレの見通し次第となる。

<失業率やインフレの数値基準>
これらの数値のひとつが基準を突破しても、フェデラルファンド(FF)金利の自動的な引き上げにはつながらず、より広範な経済見通しが利上げを正当化するかについて、FOMCによる検討が適切になったということにすぎない。

<インフレを目標近くに維持>
米経済が完全雇用を回復し、インフレ率が継続的に2%を上回ったり下回ったりすることのないよう支援するという、われわれの2つの責務のいずれの達成にもコミットしている。


質疑応答

<米財務省・FRBの債務上限めぐる緊急策、支払い優先策策定の可能性>
私が知る限り、確定した計画はない。これはあくまでも財務省が判断することで、FRBの権限外だ。(債務上限が引き上げられなかった場合、支払いの優先順位を付ける計画を策定するよう財務省から要請があったとしても)FRBがそのような計画を策定することができるかは不明だ。

<日本の金融政策>
為替や競争力の改善をターゲットとせず、幅広い経済の問題に対処するといった国内の目的達成に向けて金融政策を活用することは容認されるべきだ。
日本政府や日銀が長期にわたるデフレ脱却に向け、一連の金融政策を導入したことは自然かつ、理にかなっている。
金融政策が為替相場に影響を及ぼすことは確かだが、日銀の政策が目指すところを理解している。少なくとも現時点では有益に働いているようで、日本はデフレの領域を脱し、インフレの領域に向かっているようにみえる。

<構造的な失業>
FRBは、失業が構造的となる可能性を非常に懸念している。26週間以上の失業に陥っている長期失業者が失業者全体の36%を占めている。これほどまでの長期にわたる失業に陥ると、やる気を失うだけでなく、職探しのための人脈や技能も薄れ、就労を永久にあきらめる状況に追い込まれかねないことは理解できるだろう。雇用者側も、長期失業者を雇うことに消極的な傾向にある。一時的であるはずの問題が恒久的な雇用喪失につながる恐れがあり、これは経済および家計にとり重大な問題となる。

<資産価格はバブルの領域か>
現在の米国のように、低金利環境が長期間継続すれば、利回り追求意欲を刺激する可能性があると認識している。われわれは資産バブルの形成、レバレッジの拡大、急速な信用の伸びなど金融安定への脅威が生じるリスクを抱えている。とりわけ米国の金融政策が極めて緩和的な状況下で、われわれはこれらの脅威を特定しようと注力している。

<ドルの重要な役割>
ドルは世界経済で重要な役割を果たしている。ドルが健全な通貨であり続け、重要な役割を引き続き果たせるよう、インフレを今後も確実に制御することがFRBの仕事だ。

<雇用に関する責務>
FRBが担う物価安定と雇用の2つの責務を強く支持する。FRBが雇用と物価安定の双方に注目する2つの責務を担っていることは、米国のためになると強く感じている。われわれは2つの責務を追及することにコミットしている。

<銀行規制の経済への影響>
金融システムの強化につながる規制課題は、経済に長期的かつ重要な恩恵をもたらすものと考える。

<景気を弱めるための利上げ>
FRBが景気を弱めるために意図的に利上げを行うとしたら、それはFRBに課せられている責務の達成にとっても、また議会が取り組む赤字削減にとっても有益とはいえない。景気が弱まれば赤字は増える公算が大きいからだ。

<長期的財政赤字の経済への影響>
持続的に増え続けるとみられる長期的な赤字は経済に負の影響を及ぼす。過去数年間で赤字が膨らんだ背景には、経済の弱さも一因としてある。

<緩和縮小の停止を促す条件>
FOMCが緩和縮小の停止を検討するには、見通しの著しい変化が必要だ。
われわれは失業率、雇用増加数などを含む、労働市場に関する広範なデータを注視している。これに加え、消費や経済成長などの指標も勘案する。なぜなら労働市場の改善が継続すると見通すにはトレンドを上回るペースでの成長を確認する必要があるからだ。
われわれはインフレ率が目標を大きく下回る水準で推移している点に留意しており、インフレ率が目標水準へ戻ることを確実にしたい。

<資産買い入れ拡大を促す条件>
見通しの著しい悪化だ。労働市場の見通し(の悪化)および、インフレ率が時間の経過とともに目標水準に戻らないとの深刻な懸念が生じだ場合だ。だがFOMCは資産買い入れはあらかじめ決まった軌道にはないと強調しており、証拠を引き続き見極めていく。

<MBSと国債の買い入れ>
(住宅部門が減速した場合、FRBは国債の買い入れのみを縮小し、モーゲージ担保証券の買い入れを維持することを検討するかとの質問に対し)それぞれ両方の買い入れが、幅広く金利に影響を及ぼすと考えている。国債の買い入れは住宅ローン金利の低下にもつながる傾向がある。一部の事実からは異なる影響があることが示されているが、別々であると考えることは困難だ。

<軟調だった12月と1月の雇用統計>
12月と1月の雇用創出ベースが自分自身の予想を下回ったことに驚いた。ただ、これらの統計の意味するところを解釈するにあたり、結論を急ぐようなことがあってはならない。天候要因もあった。例年にない寒波に襲われ、雇用市場やその他の市場の経済活動が影響を受けている可能性がある。
次回のFOMCは3月に予定されている。(それまでに)次回の雇用統計を含め、数多くの経済指標が発表される。われわれにとり、これらの意味を時間をかけて検証することが重要になると考えている。

<労働参加率の低下>
労働参加率低下の大部分は構造的なもので、景気循環的な要因によるものではない。ベビーブーマー世代が高齢化しており、労働参加率が大幅に低下している。
人口の高齢化に伴い、労働参加率は今後も低下すると見込んでいる。
労働参加率低下の大部分は構造要因によるとの見方に疑いはない。だが、私自身は証拠を踏まえ、景気循環的な要因も背景にあると信じる傾向にある。
労働参加率の低下に関し、それぞれの原因がどの程度影響しているのかを確実に理解する方策はない。

<議会ができる失業対策>
われわれは金融政策を通じて、一段と速い景気回復を促進し全国的に失業率を押し下げるため、できることを行う。
金融政策は万能薬ではない。議会が同じ目標を促進するために、取り得る他の措置を検討することは全く適切だと思う。
私が知るエコノミストはみな、労働力の技能を向上させることが、この問題に対処するために講じるべき重要な措置の1つだと考えている。

<合理的な中銀当局者>
私自身、合理的な(sensible)中銀当局者だと考える。われわれは現在、金融政策が非常に長い間、テイラー・ルールなどの法則が指し示すことを実現できない極めて異例の状況にある。
大平穏期のような比較的正常な時代にはテイラー・ルールなどが合理的なアプローチを提供するが、経済が金融危機による厳しい向かい風に直面し、法則で示されるマイナス圏へのフェデラルファンド(FF)金利引き下げを実際にFRBが実行できない現状では、異なるアプローチが必要だと私は強く信じており、そう主張してきた。
われわれはフォワードガイダンスを通じて可能な限り系統的で予見可能であるよう努めている。

<今後の緩和縮小>
今後の見通しがFRBの想定通りとなり、改善を見込めるほど成長に十分な弾みがついていることを示す労働市場の回復継続が確認され、現在FRBの目標を下回っているインフレ率が時間とともに目標の向かって上昇する兆候が示されれば、慎重なペースで資産買い入れの縮小を継続する公算が大きい。

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